*カフェレポ* 第3回ふるさとカフェ『街の住環境を蘇らせる「空き家・古民家リノベーション」』

原宿にあるIKI-BA「粋場」で、第3回ふるさとカフェを開催しました。今回のテーマは、街の住環境を蘇らせる「空き家・古民家リノベーション」
講師は、我々と同じふるさとという最前線の講座を受講されていた長野の建築家である広瀬毅さんと、(社)古民家活用まちづくり機構理事長の矢野 恒さん(以後、ひささん)。講座を1期〜4期まで受講されている皆勤賞のお二方。そして、このお二方の話しを聞くのは、同講座の生徒、異業種の社会人と大学生合わせて17名。

空き家については、広瀬さんからこれから人口減少問題で必然と問題になる空き家・空き物件対策の参考になる活動を紹介して頂き、古民家については、ひささんからまず古民家を知るというところを教え頂きました。

イベント前の打合せ風景
イベント前の打合せ風景。左が広瀬さん、右がひささん。

IKI-BA

◎カフェvol.3概要
①長野県長野市の善光寺門前町での 「ボンクラ」の活動について
 スピーカー:広瀬毅さん
②「古民家」とは
 スピーカー:矢野 恒さん
③IKI-BAでの懇親会

「IKI-BA」 自立・自律した大人のための空間。ここでは食と知への好奇心を刺激する新しい場の提案を常にしており、多様な人々が学び語らう場である。
http://iki-ba.jp/

 

広瀬さんによる活動報告

ボンクラ以前の活動

長野市大門町で「株式会社まちづくり長野」による蔵の再生事業「ぱてぃお大門楽庭」において、広瀬さんは2店舗(ACTUSなど)の内装設計に関わった。ぱてぃお大門はまちづくりの成功事例として紹介されるが、実状は経営がとても厳しいらしい。
その他にもカントリープレスや日和カフェなどのリノベーションや住宅設計など多数手掛けられている。

KANEMATSU/ボンクラについて

「KANEMATSU」は、元々ビニールの加工業などを行っていた旧金松商事が所有し工場・倉庫として使われていた蔵だった。善光寺から歩いて1、2分の立地で、元々が工場・倉庫で床面積が約550平米と広大だったため、なかなか借り手が見つからず、不動産屋さんから建築家の宮本さんに、この蔵の有効活用の相談があった。
その時に一緒だったグラフィックデザイナーの太田さんと自分たちでなんとかできないかと、広瀬さんにも声がかかる。
しかし、1000万円ほどかけないと通常の事務所として使用できない状況で、「小布施ミニマラソン」の打ち上げに居合わせた7人が「ボンクラ」というLLP(有限責任事業組合)を結成し、オーナーにはテナントを探して欲しいと要望をもらっていたが、自分たちで借りようということになりオーナーに相談した。

・オーナー側の問題点
税金、メンテナンスや固定費、水道光熱費がかかる上に、シャッターを閉めていることで地域に対して社会貢献ができてない。また、企業のイメージの低下にもつながる。

・条件などについて
修繕改修は自分たちでやる代わりに、家賃を安くして欲しいと提案。その当時、他のメンバーは若く独立したばかりでお金がなかったため、払える金額は半年で15万円ということだったので、その金額をオーナーに提示した。

結果、オーナーが了承してくれて、建物の改修を自分たちで行うことになった。

ここで、bonnecura(ボンクラ)とは…
「ボンクラ」ってフランス語っぽいよね。
「bon」はフランス語で「良い」という意味。
「cura」はポルトガル語で英語の「care」と同じ「治す」という意味。またcura=蔵とも読める。
フランス語とポルトガル語の造語で、「街の中に古くて良いものをつくる」という意味です。

KANEMATSUに向けて

建物の改修は自分たちで行うのだが、太田さんがフライヤーを作り、改修を手伝ってくれる人を募集すると、意外と手伝いに来てくれた。これは太田さん作るフライヤーがかっこよく、評判が良かったからだろう。
改修に必用な建材などは、近くで公民館や蔵の解体などの情報を得るとそこに行き、折り畳み椅子50脚や床に貼ってあったパネルのフローリングを自分たちで剥がして持って帰って来ました。そんなことをしていると不思議と解体などの情報を周りの人が教えてくれるんだよね。
外観は「ビニール金松」のまま。そこには意味があり、オーナーさんの善意で借りられているということに敬意を払い、当時の外観をそのまま残しました。

広瀬さんの説明
広瀬さんによるボンクラの活動の説明。みんな真剣。

2009年の9月から契約し、11月の西宮神社のお祭りに合わせてイベントしようということで、一生懸命片付けをした。そして、お祭り当日。縁もゆかりもない自分たちが「KANEMATSU」に来たため、まずはこちらから地域に受け入れて頂くためイベントを行い、振る舞い酒を配りました。そうすると300人ぐらい来たんだよ!

ボンクラが短期間で街に対して影響を与えられた理由

① 今あるものから始める
まずは直ぐに始めたことが良かった。物事を始めるには良い、悪いがあるが、悪いことを気にしだすとキリがない。そして大切なことは、「継続」と「実行」。
アイディアそのものよりも、誰がやるかが大事であり、誰とは自分である。待っているのではなく、まずは自ら動き出すこと。
そして継続して行くために、今あるものからまずは始め、少しずつ修正しながら進めればいい。

② 違いを認める
よくアイディアが良い悪いではなく、あいつが言っているから嫌だという意見を聞く。しかし、今の若い人は多様化した時代に生きており、違いを認めることができた。
そんな時代で、ボンクラは仲良しから始まったわけではなく、たまたま集まった人達から生まれた組織のため、程よい距離感が良かったんだと思う。

③ 共有できるものを見つける
世代、価値観、職業が違う中で、「KANEMATSU」の魅力を共有できる価値観をそれぞれ持ち合わせていた。 古いものを良しと思える価値観の一致です。

④ たのしいことをやる
まちづくりには「継続性」が大事。
「継続性」とは「お金」。当たり前だが、儲かれば活動が続けられるし、モチベーションにもつながる。ただし、そんな簡単に儲かる仕事ではない。儲かるのであればもっとみんなやっているでしょ。
では、お金以外に継続性となり得るものとは。それは「たのしむ」こと。何がたのしいかは人それぞれだが、たのしみがあるからみんな継続できる。何をすれば人生を充実させられるか。お金だけはない充実感。 続けていくには「たのしい」か「お金」だろう。

⑤人に知らせる
このことはボンクラの活動をした後に実感しました。 太田さんのフライヤーやロゴはかっこよく、かっこいいデザインは「あそこに行けば楽しいことがある」と思わせるツールの一つだと気付いた。また、信濃毎日新聞が取材に来て、ある一定期間ボンクラのことを取り上げてくれたのも嬉しかった。特に田舎では新聞に掲載されることで信頼性が上がり、新聞に掲載されることは、世の中にとってオフィシャルなことになる、世の中にとって役に立つものと思ってもらえるからだ。
自分が頑張っていればいるほど、人に知らせるべきだ。誰にも知られない活動は、何もやっていないことと同じだからね。

⑤ 手入れする
そのままで本当にいいかどうかは分からないが、やりながら考えていく。日本にはもともとそういう文化があるような気がする。何が正しくて正しくないかということは決められない。やっていく中で調整していくしかない。正解はたぶんないんだと思う。正解を求めてまずは実行し、よりよい方法をみんなで考えながら進めていくことが大事。

ボンクラの活動を通して学んだこと

1つは、ボンクラは事業ではないため、儲けようとは最初から考えていなかった。そのためKANEMATSUにテナントが入ったことによるテナント料を、改修費用としてプールしておいたのだが、これが間違いだった。所得が発生し、税金だけを払うことになってしまい、それが負担になる人もいたので、年度内に改修修繕しておけば良かった。
もう1つは、自分達がやっていることは良いことだから、「良いだろう」と思うのではなく、それを「負担に思う」人もいて、独りよがりではいけない。
自分達がどう思っていようと、周囲に対してはしっかりとフォローしていかなければいけない。

 

2.ひささんによる活動報告

実はこの数週間前、ひささんは背中の激痛で入院していた。そのため、発表方法は「古民家解体新書」(以下、抜粋)という本をコピーし抜粋したアナログ形式で、時間は短めに。

壱の一 未来の子どもに残すもの(抜粋)

古民家の長所と短所を理解しよう
長所…自然素材で建てられた古民家は循環方建築であり、日本の気候風土にあった耐久性の高い建物である。
短所…夏の日差しを和らげる工夫のため室内が暗く、冬は寒い、また現在のライフスタイルにはそぐわない設備や間取りである。

この本では「古民家」を、国の登録有形文化財制度に合わせて骨組みに木材を使用した伝統構法と呼ばれる建築構法や、在来工法と呼ばれる建築基準法制定後に一般的に建てられる木造住宅で、50年経過したもの、と定義していします。
※昭和38年以前に建てられたものと考えて下さい。

古民家は日本の気候風土に合わせて夏の高温多湿の気候を快適にするために工夫された住居であり、冬はその寒さに震えなければならない構造なのです。

  • 基本的に古民家は、夏を快適に過ごすために様々な工夫が施されています。
  • 屋根の深い庇は夏の日射を遮り、太陽高度が下がる冬は日差しを室内奥深くまで導き入れます。
  • 藁葺きの屋根はしみ込んだ雨がゆっくりと蒸散することで熱を逃す役割があります。
  • 外壁の白い壁は日射を反射し、室内の温度上昇を防ぎ、土壁などの熱容量の大きな材料を用いることで夜間に冷えて昼間の温度上昇を防ぎます。
  • 畳や土壁は吸放湿性に優れ、ほど良く調湿してくれます。
  • 家の周りには植栽や池を配し、周辺の空気を冷やし室内に取り込みます。
  • 夏には夏障子などをしつらえて風通しをさらに良くしてくれます。

古民家を実測したデータによると、夏は外気温より2〜3度室内の方が低くなるそうです。

この古民家こそが日本の住文化の基本であり、日本人の考え方の原点でもあったのです。昔の加工技術では柱などの木材は貴重品であり、家を建て替える際には何度も使い回されました。そこにはものを大事にする精神があり、開放的な間取りは近隣のコミュニティを重視し、ご近所付き合いも活発でした。地域ぐるみで子どもの躾や教育などもおこなっていました。
また四季折々の伝統的な行事は代々受け継がれ、その積み重ねこそが文化となったのです。自然の前には無力だった昔の生活は、逆に自然との一体感を生み、八百万の神として周りにあるもの全てに感謝するという日本人の精神性をも育んだと思います。
住宅についても文化的な成熟が必要だと思います。そのためにはまず、原点としての古民家のことを学ぶ必要があるのです。

私が古民家にこだわっているのは、不便な生活を強いられる古民家に住むように押し付け、江戸時代の生活に戻らせるためではなく、古民家に活かされた様々な先人達の知恵を学び、それを現代の生活の中に上手く取り込むことで持続可能な循環型の建築を取り戻すためなのです。私たちには日本古来の技術と文化の未来の子ども達へ引き継ぐ使命があるのです。

ひささん説明

壱の二 古民家と現在の住宅の違い(抜粋)

古民家と現代住宅の考え方の違い

季節
気密性
主役
尊重するもの
現代の住宅
冬暖かい
高い
家族・個人
個人
古民家
夏涼しい
低い
お客様
家長主義

※余談…ジャカルタでは近代化により木造住宅が減り、鉄筋コンクリートによるマンションに移行している。しかし、コンクリート住宅によりコミュニケーションが減り、自殺者が急増。何人だと思いますか?
実は6人まで増えたんです。それまでは1人だったのが6倍になり、国は何らかの対策をとっているという。

壱の三 フローからストックへ(抜粋)

戦後の好景気はもはや過去の遺物、建てては壊すというスラクップ&ビルドの考え方から、現在はストック社会へと転換している。日本の住宅の平均耐用年数30年という短さは、世界の非常識でもある。

戦後高度成長とともに住宅も消費材と考えられ、短期間で使うのを辞めて壊してまた建て替えるというスクラップ&ビルドの考え方がなされていました。しかし近年は地球環境保護の観点や、成熟して右肩上がりが見込めない経済、少子高齢化などで「建てては壊す」フロー消費型の社会から、「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う」ストック型社会へ転換しようという考え方が広がってきました。
※その代表が古民家です。

住宅の除却年数
住宅の代替り周期
住宅への投資周期
イギリス
141
73
フランス
85
59
ドイツ
79
56
アメリカ
100
103
38
日本
40
30
23

建築物の耐用に関する統計 財団法人日本建築学会 単位(年)

壱の九 持続可能な社会とは(抜粋)

一般に、鉄やプラスチックなどの材料は、新しい時が一番強く、古くなるにつれて弱くなってしまいますが、逆に木材は時間とともにどんどん強度が増していきます。樹齢100年のヒノキの場合、伐採されてから100年後に最も引っ張り強度・圧縮強度が増しているとの研究報告もあります。木材の強度は200年〜300年は変わらないといわれており、木材の強度が落ちるのは800年〜1200年後という途方もない未来の話です。古民家は現在の住宅と比較にならない程良質な木材が贅沢に使われた、耐久年数の長い住宅です。少子高齢化で新築住宅の着工戸数が減少し、また古民家が持つ風合いや自然素材を使った住宅の流行で、古民家にも注目が集まっています。さらに、近年の地球環境問題を受けたエコ意識の高まりから、古民家の持続可能性への関心と期待も高まっています。

持続可能な社会とはそもそも何か、経済学者のハーマン・E・デイリー氏は下記の3原則を示しています。

  • 再生可能な資源は供給源の再生速度を超えることなく利用する。
  • 再生可能な資源の利用の速度は再生可能な資源に転換する速度を超えないように利用する。
  • 汚染物質の排出速度は環境がそうした汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を超えないようにしなければならない。

古民家など木造住宅が持続可能な理由は、民家に使用されている材料は、基本的に全て持続可能であり、木材、土、植物、民家の構成部材のほとんどは自然素材であること。周辺で採取が可能であり、また再利用が出来ます。

壱の十一 古民家を残す意義とは(抜粋)

古民家を残していく意義は、地球環境保全の観点で考えるなら二酸化炭素の排出削減につながることや、また未来の子どもたちのために日本の住文化を伝承し、安心して暮らせる住居を提供することなども挙げられる。古民家という古い住宅を現在のライフスタイルに合わせて快適に生活できるような提案をおこなう必要がある。 ※二酸化炭素を吸収した木材を長く使うことで、二酸化炭素を固形化できるし、定期的に伐採をすることで山の管理にもつながり、地球環境悪化を抑えることができます。

(古民家解体新書より抜粋)

懇親会風景
懇親会風景

懇親会風景その2
懇親会風景

集合写真
最後はお決まりの集合写真。上の♡型の中は、遠くから足を運んでくれたため、急いで帰られた方々。みなさまありがとうございました。

 

ふるさとカフェVol.3を通して

広瀬さんは長野から自腹で駆けつけてくれ、話をしてくれた。ひささんは入院中にお願いしたにも関わらず引き受けてくれた。お二方も迷える受講生の一助になればと引き受けてくれたんだと思う。あと、これは自分の勝手な想像だが、この「ふるさとマイプロジェクト」を応援してくれているんだと思う。
お二方のそんな気持ちが嬉しく、この活動も継続性を持たせ、みんなの支援に応えられるようにこれからも頑張って行きたいと思っている。

(大畠 稜司)

 

講師情報

スピーカー:広瀬毅|建築設計室 代表 広瀬 毅さん
1961年石川県金沢市生まれ。横浜国立大学工学部建築学科を卒業。長野で設計事務所に勤務の後1998年に広瀬毅|建築設計室を設立。2009年に「LLP.ボンクラ」を7人の仲間で立ち上げ、事務所を長野市善光寺門前の工場として使われた古い倉庫「KANEMATSU」に移転。ストックを生かす建築のあり方を模索している。ふるさと最前線1〜4期受講生
広瀬毅|建築設計室:http://hirose-aa.com/
ボンクラ:http://bonnecura.naganoblog.jp/

スピーカー:(社)古民家活用まちづくり機構 理事長 矢野 恒さん
芝浦工業大学大学院建設工学科 都市計画研究室を卒業し、都市計画コンサルタントを経て当法人「一般社団法人古民家活用まちづくり機構」を設立。再開発プランナー、住宅建築コーディネーター。 ふるさとという最前線1〜4期受講生
一般社団法人古民家活用まちづくり機構:http://www.kominka-machinet.org/

ふるさとカフェについて

地域で活躍する方を講師に招いて行う座談会形式の勉強会。講師は、地域のキーパーソン、移住や起業経験者、アカデミアの方々など。ほか、日本各地に飛び回る「ふるさとマイプロジェクトコミュニティ」のメンバーからの現地レポートも実施。参加者は毎回20名ほど。(詳しくはこちら→

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