*地域* 「神山町に見る、地域の未来(徳島県神山町)」

「自分の故郷が寂れていくのはしょうがない。」

もちろんできるものなら何とかしたい。
でも、半ば諦めている。
そんなふうに思っておられる方は多いのではないでしょうか?

「少子高齢化」と「人口減少( = 過疎化)」。
今多くの地域が頭をかかえている課題です。
そんな難題に一筋の光を投げかけている地域があります。

人口約6,300人の山あいの町、徳島県名西郡神山町。

先日はとうとう総務省長官まで視察にやってきた町。
今回はそんな神山町へのツアーのご報告です。

◎神山ツアー概要
9月6日(1日目)
・徳島市内にて懇親会
9月7日(2日目)
・神山へ移動
・NPO法人グリーンバレーの大南さんとのお話
(神山バレー・サテライト・オフィスコンプレックスにて)
株式会社プラットイーズ オフィス見学(エンガワオフィス)
・懇親会BBQ
9月8日(3日目)
・秘密の図書館見学
・すだち狩り体験
株式会社ダンクソフト サテライトオフィス見学
・お昼ごはん
・川遊び
Sansan株式会社 サテライトオフィス見学

 

1.普通の田舎「神山町」

神山町は徳島市中心部より車で1時間ほど行ったところにあります。世間的には「すだち」の生産量が日本一ということで、知られています。周りを里山に囲まれた、凛とした空気の流れる町です。

よくある話なのですが、本当にどこにでもある「田舎」です。何も知らされていなければ、とても今注目を浴びている町だとは気づかないでしょう。

神々しい山々。まさに神山。
神々しい山々。まさに神山。

 

2.なぜ「神山町」が注目されているのか?

まずは神山町のキーマンであるNPO法人グリーンバレー理事長の大南さんにお話を伺いました。

大南さんによるプレゼンテーション
大南さんによるプレゼンテーション

今、神山町が注目されている理由には2つあると言います。

1つ目は、2011年に人口が初めて転入超になったこと。
日本の人口も2004年をピークに減っていますが、神山町の市町村合併後の1955年〜2010年まで一貫して減り続けてきた人口が、2011年に初めて「転入超」になったのです。
神山町人口グラフ

2つ目は、都市部のITベンチャー企業がサテライトオフィスを設置していること。
例えば、クラウド名刺管理サービスの「Sansan」やITサービスの「ダンクソフト」など。1社だけであれば、実はそれほど珍しいことではないのかもしれません。しかし、複数社になると、それは単なる事実ではなく「現象」と捉えられるとのことでした。
現在は9社のITベンチャー起業がサテライトオフィスを設置しているとのことです。

kamiyama_sattelite
大南さんのお話を伺った「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」は、コワーキングスペースのような場所。

 

3.NPO法人グリーンバレーの歩み

今でこそ注目を浴びている神山町。
しかし、大南さんは今に至るまでに約20年間、地域に関わり続けられてきました。最初は街づくりというよりは、1991年の国際交流が活動の原点だったと言います。

その後、一緒に活動をしていた一部の方と、「アドプト・ア・ハイウェイ」を全国で初めて実施したり、今や神山の代名詞とも言える「神山アーティスト・イン・レジデンス(以下KAIR)」を実施。KAIRは、国内外からアーティストを招聘して、神山に一定期間住みながら芸術活動を行ってもらうプログラム。
今の「神山町 = アートの街」の先駆けとなったプログラムです。

神山アートウォークの地図
神山アートウォークの地図

秘密の図書館
今回見学を行ったKAIRの作品「秘密の図書館」。人生の転機になった本を3冊だけ寄贈できるコンセプトが面白い。

2004年にはNPO法人グリーンバレーを設立し、今のITベンチャー誘致のコンセプトとなる「ワーク・イン・レジデンス(以下WIR)」を実施。KAIRは「アーティスト」に住みながら芸術活動を行ってもらうのに対し、WIRは「専門技術を持っている仕事人」に住みながら働いてもらうというものです。

 

3.創造的過疎

WIRには「創造的過疎」というコンセプトがあります。
この「創造的過疎」こそが、神山が地域のモデルになると言われている理由の一つです。

日本という国自体が2050年には約9700万人、二人に一人は高齢者という予測がなされています。つまり、遅かれ早かれ多くの地域(都市部さえも)は「少子高齢化」、「過疎化」という問題に直面します。
「過疎」は止めようもないものと、単に静観することしかできないのか。
いや、「過疎」という事実を受け入れ、人口が減っていくことを前提とした街づくりができないか。

神山町は後者の立場で人口が減ることを「是」としながらも、将来町に必要と考えられる働き手や起業家をピンポイントで「逆指名」していると言います。町にパン屋が無ければ、パン屋に優先的に空家を提供する。
適正な人口構成(若者と高齢者の比率)を維持するために、専門職を持つ若者夫婦に優遇処置を行う。

大南さんが話されていた下記内容はとても印象的でした。

移住というのは、結婚に似ている。
自分の結婚相手が誰でもいいわけがなくて、自分の求めている相手を探して結婚するはず。
移住も同じように、町が誰に住んで欲しいかを選ぶ。
本来そうあるべきなのではないか。

ある程度「コントロールの効いた過疎」、「自分たちの思い描いた過疎」を実現する。それが「創造的過疎」と言われる所以です。

 

4.何があるか」ではなく、「どんな人が集まるか」

町が求めている人に住んでもらうWIR。当初はWIRは「地元の雇用を生み出さない」という批判があったと言います。

しかし、実際には「株式会社プラットイーズ」が地元の雇用を生み出しています。2013年9月現在で、地元の方を含め20人もの方を雇用していると言います。

エンガワオフィス
今回見学を行った株式会社プラットイーズのオフィス「えんがわオフィス」。「縁側」は町民の憩いの場。

「何があるか」ではなく、「どんな人が集まるか」。

人が集まることで、人の思いやアイデアが重なり、そして人の繋がりが新たな革新を生む。
「神山バレーサテライトオフィスコンプレックス」も作ろうと思って作ったわけではなく、色んな人の縁を紡ぐことによってできた偶然の産物だと言います。
まず、WIRで人を集め始めたことが全てのきっかけだったのです。

 

5.そして、「神山的なるもの」が生まれる

多くの人が移住し、日々各々が芸術や仕事を生み出している神山町。
グリーンバレーでは、特に「どんなものをつくって欲しい」もしくは「こういったものは作らないで欲しい」と言った方針は出していないと言います。

にもかかわらず、商店街の看板を「アート風の看板」にしよう。
歯医者の天井を「絵画」にしたい。

と、自然発生的に「神山らしい」街づくりがされつつあると言います。
大南さんはそれを「神山的なるもの」と表現されていました。

約20年を要して内から溢れて出してきた「神山らしさ」。
神山町の「過疎への挑戦」はまだまだこれから、とも受け取れる一言。
今後も神山町とグリーンバレーに目が話せません。

 

6.ツアーに参加して思ったこと

◎点と点を繋ぐということ

「未来に先回りして点と点を繋げて見ることはできない、
君たちにできるのは過去を振り返って繋げることだけなんだ。
だからこそバラバラの点であっても将来それが何らかのかたちで必ず繋がっていくと信じなくてはならない。」

かの有名なスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で行ったスピーチの一節です。

大南さんの話を聞いていて際立っていたのは、最初から今の姿を目指していたわけではないということでした。この場では書ききれませんでしたが、大南さんのお話は全て後から点を繋いだお話ばかりでした。「結果としてうまくいった」というイメージでしょうか。

しかし、全くの偶然で成り立っているわけでは無いことは明らかです。

「ある程度大きな方向性を決めた上で、頭の中でゴールへの無数の選択肢をアミダくじのように考える。
今の道が上手くいかなくても、すぐ横に選択肢はある。
悪い面を見るのではなく、良い面を見ようとする。」

無数にある選択肢の中でどうやって「選択」してきたのか、という質問に対して大南さんの答えです。

なぜそんなふうに柔軟に、悪く言えば目標を立てても、目標通りに行かず、いつ結果が出るのかわからない方法を取ることができるのか。
一つは大南さんには「諦めるという選択肢が無い」ということがあるのではないかと感じました。

大南さんは一定期間を除けば、神山町生まれの神山町育ち。
これからも一生住んでいく地元を、自分の好きな人達と暮らしていく地元をよりステキにしたい。
「地元の人」だからこそ、「超長期的な見方」で「自分の欲しい未来」を考えて、実行できる。

そんな大南さんの姿が、良質な点(ご縁や運)を呼びこみ、点と点が繋がることに結びついているのではないかと感じました。

◎神山町にツアーで行くということ

「初めて会う人に、東京で会うのと、神山町で会うのでは話す内容が全く違う」。
今回のツアー企画者である畑さんの言葉です。

まさにその通りで、1日目の懇親会からいきなり3次会まで飲み、
2日目には、ツアー参加者全員でお互いについて深夜まで語り明かし、
3日目には別れるのが惜しいくらい仲良くなっていました。

神山ツアー川遊び
鮎喰川での集合写真! 夏には仕事の休憩時間に川で涼むことも(うらやましい!)あるとか。

わざわざお金を払ってまで「神山町」に来るからには、興味が近い人が集まっているということ。そして、何よりも個人で行くのではなく、知っている人と行くのではなく、全く知らない人たちとツアーで行くこと。神山町で出会った方達はもちろんのこと、一緒に神山町に行った方達と強いつながりを持てたことは非常に良いことでした。

これからもどこかで出会い、将来何らかの形でこの「点」を繋げられる日が来ることがとても楽しみです。

(松村亮平)

 

主催者情報

畑 英文|畑英文事務所代表
1966年徳島県徳島市生まれ。22年間、草創期・成長期のベンチャー企業で培った経験とノウハウを、多くの「企業」と「起業」に役立ちたいとの想いから2011年夏に独立。自身の名字でもある「畑」を、種をまき、芽が出て、大きな花を咲かそうとする作物が育つ基盤となる畑になぞらえて、豊かな価値を生み出す会社経営やスタートアップのサポートを行う。同時に現在は徳島県が推進する限界集落におけるサテライトオフィスのプロジェクトにも奔走中!

高原 宏|Think TOKUSHIMA発起人
1969年徳島県美馬郡穴吹町生まれ(現在は美馬市)。伝え聞く都会のラッシュ通勤に抵抗を感じて地元・徳島のIT企業に入社し、開発〜企画〜人事など経験を積んでいたが事業環境も変わり30台半ばに東京勤務に。ならばと38歳で転職、ベンチャーのゲーム会社に拾ってもらい、その後吸収されたゲーム会社でPM、10月からゲームシステム開発部長。2011年の震災後に思い立って参加した福澤記念文明塾で「Think地域」をテーマに「Think TOKUSHIMA」を立ち上げ、東京で地元徳島を考える集まりを主催中。

徳島県名西郡神山町基本情報

人口約6,300人の徳島県北東部に位置する町。(推計人口、2013年9月1日)
1955年に阿野村、神領村、下分上山村、上分上山村、鬼籠野村と合併して神山町になる。
◎神山町役場:http://www.town.kamiyama.lg.jp/
◎イン神山 – 神山 アートでまちづくり:http://www.in-kamiyama.jp/
◎とくしまサテライトオフィスプロモーションサイト:http://www.tokushima-workingstyles.com/
◎株式会社プラットイーズ:http://www.plat-ease.co.jp/
◎株式会社ダンクソフト サテライトオフィス:http://www.dunksoft.com/work/satelliteoffice
◎Sansan株式会社:http://www.sansan.com/

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